2014年11月29日に開催された MTDDC Meetup TOKYO 2014 から、藤田 拓さん(言問株式会社)の講演メモです。
テーマは「イマドキのCMSトレンドからWeb運用を再考する」です。
スライド: イマドキのCMSトレンドからWeb運用を再考する
メモは箇条書きで書いております。
今回のお話
- Webリニューアル案件の悩みポイント2つをピックアップ
- 日本・海外CMSマーケット・トレンドの状況
- エンタープライズなCMSの変化
- Web運用のこれから
1. Webリニューアル案件の悩みポイント2つをピックアップ
1-1. 画面が小さいデバイスでのデザインをどうすればいいか?
スマートフォンサイトのアクセスは増えている。
ある調査によると、スマホサイトへの満足度は全体的に低い。
PCサイトはみんな頑張るでしょう。
スマホになると、ナビゲーションがあったり、自分から探しにいかなければならない。
スマホは画面が狭い。
PCだと訴求したいものを見えるようにできるが、モバイルはそれができない。
ウェアラブルとか、もっと画面が小さいものだとどうするか?
どうやってコンテンツを出していくべきか?
1-2. CMSを入れてもWebサイトが活性化していない?
フルCMS案件。サイトのほぼすべてをCMSで構築する
最高に更新しやすいCMS実装をしても、実際には更新されないケースも…。
実際にはリニューアル後はお知らせとか更新情報とかばかり、とか。
2. 日本・海外CMSマーケット・トレンドの状況
CMSベンダーシェア。ITR調査資料。
以前は静的CMSが強かった。MT強い(強かった)。
最近だと、海外CMSはすごく伸びている。静的CMSは減っている。
海外のCMS評価だと……
伸びているのはAdobe(旧Day Software)、Sidecore。
最近になって来ているのは、Drupal。
CMSにデジタルマーケティング対応機能が装備されているかどうかがポイント。
3. エンタープライズなCMSの変化
エンプラなCMSが変化。
昔のエンプラCMSの機能
- 編集機能
- リリース管理
- 校正・承認
- ユーザー管理
- 開発・運用
こういうのはエンプラには欠かせない機能だが、正直つまんない機能(オーディエンスにとって面白味もなにもない機能)。コンテンツともあまり関係ない。
デジタルマーケティングの機能が付いたのが、近年のエンプラCMS機能の変化。
- 編集機能
- リリース管理
- 校正・承認
- ユーザー管理
- 開発・運用
- (近年のプラス)デジタルマーケティング機能
編集機能、校正・承認機能も変化。
編集機能
よくあるタイプであるカスタムフィールド型。テンプレートとがっつり統合しているケースが多く、仕様変更に弱い。
ブロック型。実はconcrete5みたいなブロック型の編集機能は、最近のエンプラCMSでは当たり前。
柔軟性ではブロック型の方がカスタムフィールド型より有利。
商用CMSの例 : オラクル (画面映像でデモ)
PHPベースのDrupalでも同様のことができる。
校正・承認
ライトなCMSが目を背けがちなところはプレビュー。
- マルチデバイスでのプレビュー(将来的には勿論ウェアラブルも)
- 多言語でのプレビュー
- 会員/非会員の各機能権限でのプレビュー
……これらの要件に言い訳をしていませんか?
海外製のやつのプレビューはすごく良く出来ているものもある。
シミュレーション機能。concrete5もシミュレーション機能がある。
素朴な疑問。色々なデバイス・環境があるのに、プレビューできないのはどういうこと?
MovableTypeでもできればスマートフォンプレビューをネイティブで実装してほしい。
デジタルマーケティング
A/Bテストについて。
同じURLでA/Bテストを行なう機能。
Googleとかは違うURLでやれといわれるが、同一URLでABテストをできる機能が存在する。
ユーザートラッキング機能。
Cokkie渡して回遊しているユーザーをずっと追いかける。ユーザーを顕在化!「こういう事をやっていた人が会員登録をやる。」というのがわかる。
Marketoというツール。様々なアクションを集計。IPアドレスから国や年、企業名、業種などを特定。
パーソナライゼーション/セグメンテーションの機能
(例えば)ある地域に対してどういったコンテンツを見せるか。
曜日、地域、どのページを何回見たか?その人の住んでいる場所の気候。
ありとあらゆる属性・情報を取得し、それを元に見せるコンテンツを出し分けることができる。
さらに、情報を見る人のシミュレーションをペルソナ設定ですることもできる。
実際そんなことをやれるのかな?(回せるの?使えるの?)という疑問もあるが、ブロック機能とプレビューがしっかりしていないと、こういうことはできない。
ブロック機能とマルチチャンネル・条件プレビューができないと、デジタルマーケティング機能の活用は厳しい。
ポイントはZero IT。
高速なPDCA。Zero ITじゃないと高速に回せない。
CMSに解析ツールがなかったとしても、Google Analytics(以下GA)以外でも解析ツールがたくさんある。
GA、実は最近海外では「微妙だよね〜」と言われていたりもする。
例えばHubspotはインバウンドマーケティングで解析とかができる。
CMSのマーケティング面では、HubspotがWordPressよりも優秀だよねという声がある。
要はMAツール、解析ツールがCMS機能を付けているということ。
4. Web運用のこれから
いままで(〜2011年くらいまで)のCMS。……実装者が実装しやすいことを重視。あんまりユーザーのことを考えていない。
イマドキのCMSの視点。ユーザーに対してどういうサイトを展開していくのがいいかを重視。色んなユーザーに個別に訴求できるように。
GAのようにバルク(ひと固まり)で理解するのではなく、セグメント(細かい情報の断片とか?)として理解(個別も理解可能)。
2つの悩みポイントについての藤田さんの私見
悩みポイント1。画面が小さいデバイスでのデザインをどうすればいいか?
ウェブサイトもその人の状況を把握し、狭いエリアになるべく最適な形で情報を出す、という風になってくるのかなと思う。
悩みポイント2。CMSを入れてもWebサイトが活性化していない?
何かの施策を打ちたいというときに、どう変えればいいのかというアクションと、PDCを回すという所をスムーズにするためには、ブロック型CMSが重要になってくるのではないか。
かつ、ブロック単位にどんな事の結果になっているかというのがわかるとより良い。
もうひとつ
もうひとつ。運用後に活用しやすいデザインとスタイルガイドが重要になってくる。
例 : スターバックス(米国)のスタイルガイド
スタイルガイドがあれば、キャンペーン等を立ち上げる時もラク。
なぜかスターバックスのco.jpは米国などとは違う……
ルールに則ってやれば、車輪の再発明をする必要もなく、運用もしやすい。
そういう設計をすれば、今後CMS案件は幸せになると思う。
おわりに
ウェブサイトからデジタルチャンネルへ。効率的から効果的へ。
CMSも安いからとかではなく、運用のしやすさも考えて。
ただコンテンツを出すだけではなく、マーケティング・コミュニケーションをしていこう。
クリックよりも、どう行動しているか。点よりも線や面を考えて。
「使いやすい」よりも「ユーザビリティ」 = Use の Ability ……どういう風に使う可能性を増やしていくか。
ドカーンとローンチしたらそれで終わりじゃなくて、常に継続的なやりとりを心がけて。
実はECサイトや個人サイトって意外とこういうことをやっていたりするけれど、企業サイトもやっていったほうがいい。
(プレゼンここまで。太字の強調は筆者によるものです。)
感想
イベントから約1ヵ月ほど経過してしまいました……ですが、今後のCMS事情を把握する上でなかなかいいお話だったと思いました。
藤田さんのお話では、ブロック型のCMS(≒ 代表的なもののひとつとしてconcrete5)を推しているという点が強く印象に残りました。
ビジネスやマーケティングに即した内容のお話が多かったので、個人的にはついていくのがやや難しい点も多かったのですが、ただコンテンツを上げればいいだけではない、運用していくことの重要さや、それに対応していくためにCMSに求められていく機能は何かという点が、短時間で把握できるお話だったと思いました。
あと、このイベントに関しては、プロジェクターなどの画面まわりやスピーカーの通信といった音声面など、設備系トラブルが相次いで、ちょっと時間が短めだったり話の後半が駆け足気味になってしまったのがちょっぴり残念でした。