2014年12月13日に開催された CSS Nite LP38「Webデザイン行く年来る年(Shift8)」 から、長谷川恭久さん( @yhassy )の講演メモです。
テーマは、「基調講演:Webのスーパーヒーローになる方法」です。
メモは箇条書きで書いております。
(※ もしかすると後日加筆、修正する場合もしれません。予めご了承ください。)
はじめに
(最初に参加者席に座っていた長谷川さんの知り合いの方を3名立たせて、その方々の経歴を紹介しました。3名とも職種が少しづつ違う方々でした。メモはその後から……)
今日ここに来ている方でデザイナーをされている方、立ってください。
エンジニアやプログラマなど、その他の職種をされている方も立ってください。
(会場参加者ほぼ全員立つ)
今日ここに来ている方、みなさん「デザイナー」です。プログラマとか関係ありません。ここで今立っている方々は、世界を変えている人達。世界中で繋がっているWebのために何かもっといいものを作りたいと思って今も何かを作っているのだと思う。
週末にセミナーに来るなんて、他の業種から考えれば、ある意味異常なこと。それでももっと良くしたいという気持ちがあるから来るのだと思う。
Webは今年で25周年になった。
Webによって技術や考え方、暮らしがだいぶ変わった。一人一人が情報公開。知識を共有。
Webを一人でも多くの人達に使ってもらおうと、毎日仕事をしているのが私達の役割。先ほど立った皆様「デザイナー」はものすごい力を持った人達だと思ってる。
人々を幸せにするのも、ストレスを与えてしまうのも、考え方を変えてしまうのも、「デザイナー」の力があってこそ。このすごい力を、私達は責任を持って使わなければならない。クライアントやチームメンバーに対して、正しくデザインを使うように広めてかなければいけない。
スーパーヒーロー = 「デザイナー」
責任を持って力を使わなければならない。
スパイダーマン『大いなる力には、大いなる責任が伴う』
スーパーヒーロー達から学べる3つの事。実践している事。
スーパーヒーロー達から学べる3つの事
- 巨大な敵に立ち向かう。
- 継続する。あきらめない。
- 自分以外の事を考える。
1. 巨大な敵に立ち向かう – 皆さんに実践してほしい事
自分より大きな的に戦いを挑む。
「デザイナー」の敵は?
クライアント?丸投げする上司?
違う。真の的は私自身。
「どうせ無理」
行動を起こさないための「どうせ無理」
デザインのポテンシャルを最大限に生かさないまま世に出してしまう。
「どうせ無理」が私達「デザイナー」が戦わなくてはならないもの。
私は面倒臭いデザイナー。依頼をされてもすぐには作らない。クライアントに対してまずはみんなで一緒に考えましょうと言う。
理想のデザインプロセスができるように努力している。
その結果、クライアントに体するいろいろな方法論、解決案などが分かった。
私がこう喋る事で「貴方(長谷川さん)は有名だからうまくやっていける。私は「どうせ無理」だと思う。」……という思考が働くかもしれない。でもそこでスーパーヒーローの役割の2つ目の点。
2. まずは続ける。あきらめない。
スーパーヒーローは期間限定では働かない。巨大な敵が出てきて負けた。それであきらめるわけにはいけない。
続ける事で、信頼や信用を得る事ができる。
悩む。苦しむ。時には一緒になって目的のために進む。
スキルや実績ではない。続けていることが尊敬に繋がる。
CSS Niteは10周年。
10周年はモチベーションだけでどうにかなるものではない。
苦情、批判、悪口もある。
続けているから、信頼、信用があるイベント。
大阪で制作会社をやっているある方(※ 名前が出ましたが、筆者の判断で念のため伏せます)は、平日はブログを毎日書いている。
平日に毎日書いても誰もアクセスに来ない、時間の無駄……「どうせ無理」と思うかもしれない。
でも続けた結果、大きめの案件が取れるようになった。読んでくれている人が増えている。
私はさすがに毎日ではないけど、10年間プログは続いている。Podcastもやっている。
最近はブログ記事の画像はSketch.appでやっている。
ブログを書く限られた時間で新しいスキルを得ようとやっている。本を読むよりいい。
私は失敗ばっかり。うまくいかないこともある。
敗戦はある。それでもあきらめないでつづけているからこそ、今でも自分がやるべき事をやっているのではないかと思う。
みなさんも何かやってみてください。続けてみてください。
3. 自分以外の事を考える
では、続けるためのモチベーションは?
一回成功しても「次は無理かも」と思ってしまう。それでも続けていくには?
スーパーヒーローは「自分をかっこ良く見せたい」とか「モテたい」とか考えていない。
家族の事や、コミュニティ、地域、社会、世界の事を考えて戦っている。今の自分には何ができるのかを考えて、敵と戦っている。「デザイナー」も同様。
自分がこうしたい、ああしたいということを考えるよりも、同業者達からチヤホヤされたいと考えるよりも、ここのサイトに来る人たちの事を考えているはず。サイトを運営する企業にとってベストな事とはなにかを考えるはず。
ここでも新たな敵が出てくる。
「どうせ無理」という思考はクライアントも持っている。プログラマ、マーケ、営業なども持っている。
色々な理由をつけて、あきらめる。するとデザインが不本意な形でサイトが世に表れる。
ソーシャルメディアを見ていると、よくないサイトの批判、批評をよく見る。
そういうサイトは必ずしもデザイナー、制作者だけのせいではない。ワークフローの問題が多い。
「どうせ無理」と考える人が責任を転嫁している。
誰が責任を持つべきなのか。私は「デザイナー」だと思う。
「私には関係ありません」「ディレクターの◯◯さんがなんとかしてくれる」「御社だからこそできる。弊社ではできないよ。」他人に期待する。
「どうせ無理」という(内面的な)敵と戦ってほしい。
でも一人でやるのは辛いと思う。
一人では無理と思う場面はある。仲間と一緒に戦うこともあるだろう(スーパーヒーローも「デザイナー」も)。
一人が無理だと思ったら、上司やチームメンバーなどに協力を求める。断られても、何度でも求める。分かってもらえるまで色んな手を使う。
おわりに
CSS Niteなどのような外部の集まりはいい場所だと思う。今日立ってくれた皆さんは、ふだんの職種を超えてみんなスーパーパワーを持っている。
先ほどは大まかなくくりでみんな「デザイナー」といったけれど、実際の皆さんは一人ひとり、仕事上での立場・役割が違う。
その違いをみんなで共有する事で、「こういう視点があるんだ」という気づきもあるはず。
それが明日への糧になるだろうと思う。
今日学んだ事は、ビルの小さなセミナーの空間から外に持っていかないと、何も変わらない。ただメモを取っただけでは、皆さんのやりたいデザインは実現できない。
仕事場に、クライアントに、広めてってください。
スーパーヒーローは皆様一人一人です。Webを良くしていきましょう。
(プレゼンテーションここまで)
感想
今回の長谷川さんのShiftでの講演は非常にメッセージ性、啓発性の強い、力のある内容だったと思います。過去のCSS Nite Shiftシリーズのみならず、長谷川さんの過去のこれまでの講演でもかなり突出した「熱さ」だったと思います。
今回長谷川さんが仰った「デザイナー」というのは、普段の業務におけるデザイナー(Webデザイナー)とは異なり、クライアント担当者をも含め、Webサイトづくりに携わるすべての職種の人を指し示していると解釈しました(なので上記のメモではあえて鍵括弧「」をつけました)。
そういう意味では、この日の2週間前に行なったMTDDCでの「好みや多数決で決めない、デザインとの正しい付き合い方とほぼ似通った内容だったとも思います。
ただし今回は、MTDDCの時よりもはるかに参加者のメンタリティに踏み込んだ力強さがありました。
皆さんはすごいパワーを持っている……これは立場や職種を超えて、誇りを持って「私はこれがいいと思う」という意見をみんなで出し合えば、あらゆる問題を突破できるということなのだろうというメッセージだと思いました。
自分の「肩書き」にとらわれすぎて、自らの可能性を狭めてしまうのが、最も勿体無いことなのだろうと思います。
参考リンク
追記 (2014-12-19): 長谷川さんによるエントリーが出てきました。